無理やり差をつける業績評価のカラクリ
絶対評価といいつつ、相対評価という問題
東京都の現行の業績評価制度は、第一次評価者は校長、第二次評価者は教育長であり、校長の第一次評価は、建前としては絶対評価ということになっている。
しかし、校長は、教育委員会からABC3段階評価の分布率を示され、「分布率適用資料」を第一次評価と併せて教育委員会に提出しなければならない。しかも、そこでは、職種ごとに職員に校内順位をつけて同じBでも昇順に並べさせられるのだ。第一次評価は、事実上、相対評価に変質しているというべきだ。
土肥校長の裁判でも、都教委が校長に「C・D併せて20%出せ」と強要していることの違法性が重要な争点の一つとなっている。大嶽さんの業績評価裁判でも、「分布率適用資料」は絶対評価を相対評価に歪めており違法だと主張したのだが、一審判決では退けられている(判決文56~7頁参照)。
情報公開請求で秘密文書を暴く
情報公開制度を使って、人事考課規則に「教育長が別に定める」とされている相対評価の配分率や資料の分布率、教育委員会が第一次評価を相対評価に変換する手続きを定めた文書を請求した。当初開示されたものは、「区市町村教育委員会人事担当止まり」とある「取扱注意」文書。これについて言えば、一つ目の矢印以下がすべて黒塗りであったが、不服申立をし、情報公開審査会の答申を得て、黒塗り部分を開示させた。
不服申立によっても、分布率の数値については開示させるには至らなかったが、開示された文書からは、名ばかりの絶対評価の実態が浮かび上がってくる。
「区市町村教育委員会人事担当止まり」の「取扱注意」文書では、「第一次評価を逆転させた順位付与はできない」「校内順位を付与した結果、校内順位と絶対評価の逆転がないよう注意すること」「『校長が付与する順位は、相対評価に活用される。』旨周知して下さい」と記載されている。
名ばかりの「絶対評価」
「別紙2」の「分布率適用資料」の様式を見てほしい。「分布率適用資料」欄には、定められた分布率に沿ってAABBBBCCC…といった相対評価が並び、「学校順位欄」には校内順位が記入されていく。「総合評価」欄にこれと矛盾する評価を記入することは、不可能に近いことがわかる。「分布率適用資料」と「学校順位」に縛られた第一次評価は、やはり、絶対評価とはいえないものに変質しているというべきだ。
他方、教育委員会が順位を付与する段階では、「学校が異なる場合、絶対評価を逆転させた順位付与は可能」されている。人事考課規則では、市町村教委の人事担当部長、経営支援センター所長は、校長の第一次評価結果について指導・助言を行い、教育長は、再評価を命ずる権限を付与されている。しかし、それでも絶対評価を堅持しようとする校長には、教育委員会が強引に順位を入れ替えるということだろう。
予め示された分布率に沿って評価を割り振らせる「分布率適用資料」は、教育庁以外の他部局にはないシステムである。「絶対評価といいつつ相対評価」の問題は、いわゆる逆算的評価、下位評価の後付的なネタ探しの原因ともなっている。
頑張っても報われない、無理矢理差をつける業績評価制度のカラクリを暴く資料として、開示文書を活用していただければ幸いである。
■区市町村教育委員会宛通知(21教人職第1589号)
■別紙1 取扱注意 マル秘文書
■別紙2 分布率適用資料の様式
■区市町村教育委員会人事担当止まり 取扱注意文書
上記4文書は次をクリック http://misakinokai2012.web.fc2.com/gyosekihyokajishi.pdf
<予定>
12:00~ 開場
13:00~ オープニング・コンサート 加藤登紀子 ほか
14:00~ 県民大集会
開会あいさつ
呼びかけ人あいさつ
大江健三郎さんの連帯あいさつ
県民の訴え
黙祷(14:46)
集会宣言採択
閉会の言葉
15:00~ 行進説明
15:15~ 行進開始
2月27日、都教委に要請書を提出
2月27日、都教委要請行動(都教委包囲首都圏ネットワーク主催)が行われました。25人が参加し、6団体・個人から9つの「要請書」等が提出され、大嶽さんと岬の会も以下の要請書を提出しました。
都教委は総務部教育情報課長伊藤氏ともう一人が対応。残念ながら、要請先の担当部署の責任者ではなく、担当部署に取り次ぐ窓口としての対応なので、実質的な話し合いはなされませんでした。3月12日までに回答することを約束させました。
2012年2月27日
東京都教育委員会
委員長 木村 孟 様
教育長 大原 正行 様
要 請 書
2011年10月26日、東京高裁民事12部(梅津和宏裁判長)は、不当な業績評価とそれに基づく昇給延伸を争う裁判で、1審に続いて大嶽昇一に対するC評価を公正評価義務に違反した違法なものと断定し、これを追認した人事委員会の判定の取り消しを命じました。東京都は、上告を断念し、同判決は確定しました。
貴委員会は、2月15日付で、大嶽に対する昇給延伸分の給与の回復措置をとりました。しかし、昇給延伸の根拠となった2004年度の総合C評価、各項目別評価がどう修正された結果、この措置がとられたのかは、不明なままです。一言の謝罪も反省の意の表明もなく、涙金でコトを終わらせようとする貴委員会の姿勢には、怒りを覚えます。
人事考課規則第12条7項は、業績評価に過誤がある場合には、都教育長は、区教育長を指導すると定めています。貴委員会は、世田谷区教委に対してどのような指導を行ったのかを明らかにしてください。
それ以上に重要なことは、この裁判で明らかになった業績評価制度の問題性、裁判所が貴委員会に突きつけた課題は、いまだ何一つ解決していないということです。大嶽への不当な評価は、氷山の一角にすぎません。
貴委員会は、判決を真摯に受け止め、「根拠となる事実を欠き、公正評価義務に違反した」デタラメな評価がなぜ生み出されたのか、その原因を徹底的に究明し、二度と繰り返さないための再発防止策を全都の教職員に明らかにするべきです。それが果たされるまで、本年度の業績評価の実施、少なくとも給与反映は凍結されるべきです。
ましてや、業績評価の公正性確保も、救済制度の整備もしないまま、勤勉手当の成績率を導入するなど、言語同断というべきです。
以下の点についての貴委員会の見解を文書で明らかにすることを求めます。
1 業績評価制度を廃止すること
今回の大嶽の業績評価裁判によって明らかになったことは、業績評価制度はデタラメであり、「資質向上」どころか、教職員を分断し、服従を強制する手段でしかないということです。大嶽へのデタラメな評価は氷山の一角に過ぎません。裁判所は制度そのものの問題性にあえて踏み込んでいないとはいえ、裁判で暴かれた大嶽へのデタラメな業績評価制度の運用実態は、公平公正な評価など不可能であり、業績評価は本質的に恣意的な制度でしかないということを突き出しました。
このような恣意的な制度によって教職員の人事と給料が左右され、それが故に、教職員が評価を気にして自由に物も言えない、このような状況は一刻も早く解消されなければなりません。そのために、このような否定的な教育現場の現実の根幹にある業績評価制度の廃止を強く求めます。
2 東京高裁判決の判示事項について、評価者に周知徹底すること
10・26東京高裁判決は、評価者には公正評価義務があり、これに反する評価は違法行為となること、「不利益を伴う評価」は相当な根拠が必要で、その立証責任は評価者側が負うと判示しました。
新採教員に対するパワハラ、セクハラなど、評価権限をカサに着た校長の横暴は、目に余るものがあります。「評価に響くぞ」の一言が、職員を怯えさせ、追いつめています。
評価者には公正評価義務があること、恣意的な評価は違法行為となることを、まず全都の校長に周知徹底するべきです。
さらに、その場で注意も指導もしていないことを下位評価の根拠とすることはできないこと、本人からの事実確認なしに、副校長や主幹からの報告だけで評価してはならないことなど、裁判所から指弾された点を受け止めた改善策を明らかにしてください。
3 不当な評価を生み出す原因である「分布率適用資料」を廃止すること
業績評価実施要領では、「総合評価の結果に合わせるように事実とは無関係に各要素を評価する、いわゆる逆算的評価は行わないこと」とされています。しかし、大嶽の場合がそうであったように、はじめにC・D評価ありきで後付けで理由をこじつけるやり方が横行しています。その根本原因は、校長に評価の分布率を示し、職員を成績順に並べた「分布率適用資料」を提出させていることにあります。
都立学校の校長に対して、貴委員会が「C・Dを20%以上出せ」という指導をしていることは、土肥校長の「学校に言論の自由を」裁判の判決でも認定されている事実です。
第一次評価は絶対評価といいつつ、事実上、相対評価に歪められているというべきです。
オール都庁の中でも、「分布率適用資料」を採用しているのは、貴委員会だけです。ただちに廃止することを求めます。
(続きは、下の「続きを読む」をクリックしてください)
続きを読む人事委員会の責任逃れを許さない!
再判定に抗議文を提出
先にお伝えしたとおり、大嶽さんの措置要求を棄却した人事委員会判定の取り消しを命じた東京高裁判決の確定にともなって、1月31日、人事委員会は再判定を出しましたが、それは「措置要求を却下する(都教委、区教委の是正によって昇級延伸が取り消され、給料が回復され、要求が実現されたため、というのが理由)」というものでした。
まるで他人ごとのように裁判経過を述べるだけで、自らの過ちを認め反省するような言葉は一切なく、結局、都教委・区教委の是正に乗っかっただけで、主体的な責任をまったく回避した認めがたい再判定に対して、大嶽さんと岬の会は、以下の抗議文を提出しました。
2012年2月21日
東京都人事委員会
委員長 関谷 保夫 様
抗 議 文
大嶽 昇一
〒182-0033 調布市富士見町4-21-19
TEL 090-4935-6616
岬の会(業績評価裁判を支援する会) TEL 090-1259-4509(事務局 末木)
1月31日付けで貴人事委員会は、2005年8月30日付けで大嶽昇一が行った措置の要求を却下する判定を出しました。この判定は、司法に裁かれたことへの一片の反省もない許し難いものであり、到底受け入れることはできません。私たちが承服できないだけてなく、これでは、専門的人事行政機関としての貴人事委員会への失われた信頼を取り戻すことは到底できないでしょう。強く抗議します。
この判定は、本件措置要求について貴人事委員会が2008年3月18日付けで行った棄却判定を、2010年5月13日に東京地方裁判所が取り消す判決をし、さらに被告である東京都と世田谷区の控訴に対して、2011年10月26日に東京高等裁判所がこれを棄却する判決をし、当該判決が確定したことにより、再度の判定を行ったものです。
先日1月17日に私たちが貴人事委員会に提出した要請書で述べたように、裁判を通して明らかになったことは、貴人事委員会の業績評価に係わる措置要求の審査方法及び審査内容が根本的に誤っているという大変深刻な事態だったはずです。私たちは、何よりも貴人事委員会の誤った審査によってなされた誤った棄却判定を取り消し、昇級延伸措置を取り消す判定を改めて出し直すことを求めました。同時に、大嶽昇一への謝罪、誤った判定をしてしまった原因の究明と再発防止策を明らかにすること等を求めました。
しかし貴人事委員会の今回の判定は、これらすべての問題点をすり抜けて、ただ東京高裁判決を受けた世田谷区と東京都の是正措置に乗っかり、「昇級延伸措置は是正され、校長研修はすでに終わっており、要求の実効性は消滅したから却下する」というものでしかありません。
問われていたことは、任命権者の追認機関に成り下がってきた現状を厳しく反省し、公正・中立的立場で任免権者の人事権行使をチェックする貴委員会の本来の役割を回復することだったはずです。今回の判定の出し直しは、あまりに安直であり、どこまでも任命権者に乗っかったやり方というべきです。まったく反省の色が窺えません。
業績評価制度のデタラメな運用実態が明らかにされた以上、貴人事委員会がやらなければならないことは、それを必然化する制度上の問題点を真摯に検証し、改善策を明らかにすることです。そして任命権者(教育行政)に対して、制度の根幹にまでメスを入れた原因の究明と、再発防止策を明らかにするように、また、それが明らかにされるまでは制度の実施を凍結するように勧告することです。
貴人事委員会は1月17日の話し合いの場で、(業績評価に基づく昇給区分決定に係る措置要求がなされた場合の審査方法に係わる)内部的な「マニュアル」の改善はじめ、審査のやり方を改善する、示せるものは示したいとの旨、明言されました。約束通り具体的な改善策をすみやかに回答されるよう再度求めます。
また、1月17日付け要請書でも述べたように、貴人事委員会は、2011年度の勧告において、能力・業績の給与反映をさらに徹底させる方向を打ち出し、これを受けて、東京都は、勤勉手当への成績率導入の全職員への拡大を提案しました。
査定給の根幹をなす業績評価の公正性・正確性の欠如が明らかとなったにもかかわらず、そのことを省みることなく全く逆に、さらに能力・業績の給与反映を強化することなど許されるはずもありません。あらためて上記勧告の撤回と、業績評価制度の抜本見直しを検討されるよう申し入れます。
以上
ヒューマンチェーンで大阪市役所を取り囲む

「岬の会」の仲間たちと、会の旗。この旗は、大嶽さんのお母さんが作ってくださいました。
Author:岬の会
世田谷区立小学校の教員である大嶽昇一さんは、2004年度の業績評価におけるC評価を不当であるとして、世田谷区に苦情を申し出、東京都人事委員会に取り消しを求める措置要求を行いました。しかし、いずれもまともな対応がなされないまま、却下や棄却とされました。
大嶽さんはやむなく2008年3月に東京地方裁判所に提訴。9回の公判を経て、2010年5月13日に勝利判決をかちとりました。裁判所はこの判決で、①不当評価と昇給延伸を容認した東京都人事委員会の判定の取り消しと、②違法不当な評価によって受けた損害の賠償(昇給延伸にともなう給料の是正と慰謝料)の両方を命じたのです。
これを不服とする東京都と世田谷区は東京高裁に控訴しましたが、2011年10月26日、控訴審も勝訴しました。東京都は上告を断念し、この高裁判決が確定し、最終的に大嶽さんの業績評価裁判は勝利しました。
この裁判を通して大嶽さんが明らかにしてきたことは、この業績評価を根幹とする人事考課制度は、教育行政による教職員への思想統制そのものであり、それは、教職員を分断して協働と団結を破壊し、学校現場の多忙化と教職員の精神性疾患や早期退職を激増させる元凶になっているということです。したがってこの裁判では、単に大嶽さん個人の評価の不当性を争うことにとどまらず、業績評価制度そのものの違憲違法性を訴え、この制度は撤廃するしかないことを主張してきました。
この裁判の勝利が突破口になって、業績評価―人事考課制度の撤廃に向けた現場の取り組み広がることを願って、このブログを通して多くのみなさんと交流できればと思います。
岬の会(業績評価裁判を支援する会)事務局
現場の情報を寄せてください
